経営者の「忙しい」とは? 経営時間の「量」を考える

今回は、経営者が「忙しい」と感じる時、実際どのような状況になっているか。「忙しい」の中身について考えてみます。まずは、時間の「量」からです。

時間が足りない 「量」の不足
一日24時間から、睡眠と生活に必要な時間を除けば、理屈のうえでは残りの時間すべてを会社経営にあてられるはずです。それでも「時間が足りなくて……」とこぼす経営者は少なくありません。
「何に時間を取られていますか?」とお聞きすると、次のような答えがよく返ってきます。

①家事・育児・介護に時間を取られる
特に多いのが、子育て中の女性経営者です。子どもの世話や送迎、食事の準備・片付けを含め、家事全般をこなす負担が重いというケースです。「時間が足りない!」という声をよくお聞きします。

また、親の介護に時間を取られている経営者も少なくありません。
付き添いや施設との往復、急な呼び出しなどで、長期間にわたって時間が取られることも多いですし、予定が読めない部分もあります。疲労が蓄積していきます。こちらは性別を問わず、誰にでも起こりうることです。

②異業種交流会や同業・地域の集まり、会食に時間を取られる
地域の異業種交流会や同業者の集まりで役職につくと大変です。活発な団体ほど、役職者は忙しくなります。一方で、社内では言えないことが言え、同じ境遇の経営者と愚痴をこぼし合ったり情報を得たりと、そこでしか得られないものも多くあります。居心地のいい場でもあるのです。

取引先との会食も同様です。「仕事のため」という名目が立つぶん、なかなか減らしにくい時間です。

③AIとの壁打ちに時間を取られる
最近じわじわ増えていると感じるのが、このケースです。経営の課題や自分自身の悩みをAIにぶつけ、疑問を整理したり、判断の選択肢を考えたりする時間が増えています。

目を真っ赤にした経営者から、「AIと対話していたら深夜になってしまった。」というお話を伺ったこともあります。私自身も実感していますが、気がつくと、ずいぶん長い時間AIに向き合っていることはないでしょうか。

時間の不足をカバーする 「量」の確保の方法
では、このような場合どうすればよいのでしょうか。

①家事・育児・介護の時間
まずは、自分が使える資源は何かを確認し、時間を確保する手段を考えることです。 例えば、パートナーや家族です。お互いの環境や得手不得手を理解したうえで役割分担を決め、必要な時には柔軟に対応する。そのうえで、足りない部分は家族以外の第三者へアウトソースすることも必要です。

私の知り合いに、3人の子育てと急成長する会社のかじ取りを両立している女性経営者がいます。パートナーも会社勤めと伺っていたので、どのように両立しているのか尋ねたところ、ハウスキーパーをフル活用しているとのことでした。

介護も同様です。一人で抱え込まないこと。地域包括支援センターやケアマネジャーに早めに相談し、介護サービスを上手に使うこと。兄弟姉妹がいれば、互いの状況を十分理解し、なるべく公平に分担するよう話し合っておくことも必要だと思います。
ただし、お互いの関係性を保つことが前提であることは忘れないでください。

②異業種交流会や地域・同業の集まり、会食の時間
ここでお伝えしたいのは、「経営者として優先すべき時間は何か」と「ほどほどに」の2点です。

会社のかじ取りや業務の執行を安心して任せられる役員・幹部がいれば別ですが、中小企業ではそうした会社は少数派でしょう。

学びや出会いの多い場であることは確かです。しかし、会社ではあなたの指示や相談を待っている部下がいるはずです。会の幹事や役職の代わりは、ほかにもいます。でも、自社の経営者の代わりはいないのです。

その会への参加や準備の時間を、自社のために使ったら何ができるか。この客観的な視点を常に持っていただきたいと思います。会食も目的のはっきりしたものに絞り、二次会は失礼する。それだけでも、ずいぶん時間が生まれます。

ちなみに前職時代、こうした会に数多く参加し、多くの役職を務めている地域の経営者がいらっしゃいました。アポイントがなかなか取れず、苦労した方です。
そうこうしているうちに会社の業績が傾き、結局倒産してしまいました。電子部品の製造業でした。

今思えば、その経営者に現状を冷静に見つめ、将来を考える時間がしっかりあれば、違う展開になっていたのではないか……と思います。

③AIとの壁打ちの時間
皆さんも感じているかと思いますが、AIと壁打ちをすると、最後に「次は○○しましょうか?」と提案してくることが多いですよね。

今のAIは、膨大な文章を学習したうえで、人が「こちらの回答のほうが良い」と評価した方向に返答の仕方を調整しているそうです(AIによると「人間のフィードバックによる強化学習」だそうです・・・・)。

そのため、こちらが関心を持って対話を続けると、さらに詳しい説明や新たな視点が提示され、話題が次々と広がっていきます。最初はちょっと確認するつもりだったのに、気がつけば当初の問いから離れ、広く深いところまで考え込んでいた、ということも起こります。

例えるなら、お客様アンケートの点数で評価される営業担当者のようなものです。感じが良く、気が利き、「ほかにもお手伝いできることはありますか?」と声をかけてくれるありがたい存在ですね。でも段々負担に感じることも・・・・でしょうか。

こちらが切り上げない限り、AIの提案はいつまでも続きます。しかもAIは疲れません。こちらの時間がどれだけ過ぎたかも気にしません。

どこまで考える必要があるかを意識していないと、知らず知らずのうちに時間を費やしてしまいます。
AIと対話を続けることと、経営に必要な答えを得ることは、同じではありません。過剰な対話を続けることで時間を浪費している。しかも、本人には浪費だと感じられないのは問題です。

では、どうすればよいのでしょうか。

私自身への反省も込めて言えば、「AIを使う目的と、どこまでの答えが必要かを最初に決めておく」ことだと思います。
具体的には、次のような工夫が考えられます。

①「何を決めるための材料がほしいのか」を、どこかに書いてから質問を始める
②時間を区切る(例えば、1テーマ20分まで)
③深夜には使わない

AIにはできず、経営者にしかできないこと。それは「意思決定して行動すること」です。
AIからは、そのための材料と選択肢をもらう。そう割り切って付き合うことが、経営者の時間を守ることにつながります。

今回は、経営者の時間の使い方のうち、「量」の確保について考えてきました。

「量」の確保には、会社と取引先との距離など、物理的な要因も関わってきます。
ただ、時間の使い方の「質」を見直していけば、カバーできることは増えていくと考えています。

次回は、「時間の使い方そのもの」、つまり「質とバランスの問題」について考えていきます。