【総括】理念とはー 実例と改めてお伝えしたいこと
このカテゴリーでは、全9回にわたり理念の意味と効果についてお伝えしてきました。最後に、中小企業の経営者様にも参考にして頂きたい実例と、改めてお伝えしたいことを述べたいと思います。
理念の実例
1.トヨタ自動車
日本の製造業を代表するするトヨタ自動車の経営理念体系です。
トヨタも元は豊田佐吉が創業したオーナー企業でした。今でも佐吉の遺訓をまとめた豊田綱領がDNAだと述べられており、「友愛」「家庭的温情」などファミリー企業として人を大切にする想いが、理念の根底にあることがわかります。
コアとなる豊田綱領の元、ミッション、ビジョン、バリューが定められ、シンプルな一行の文章とブレイクダウンされた解説の組み合わせで、社内外に伝わりやすい理念になっています。
トヨタフィロソフィー
トヨタウェイ2020/トヨタ行動指針
2.ファーストリティリング
ユニクロを展開するファーストリティリングのグループ企業理念です。
実質的にパーパスである「ステートメント」の「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」を筆頭に、ミッション、価値観、行動規範という構造になっています。
FAST RETAILING WAY (FRグループ企業理念)
特徴的なのは「私たちの価値観 ―Value」と、「私の行動規範 ―Principle」を分けていること。主語を変えていることです。
Valueは大切にする価値観・考え方なので、主語は「私たち」。Principleは、実際に行動するべき行動規範なので、主語は「私」としていると思います。
実践的に運用されているのでは、と想像できますね。
3.中央タクシー
長野県に本社がある中央タクシーの理念体系は、経営理念・憲章・目的と使命・行動指針・基本動作の5階層で形成されています。
中央タクシー株式会社 経営理念
経営理念では、「お客様が先 利益は後」とし、お客様と利益についても、「お客さまとは」「利益とは」と明確に定義されています。
また「行動指針」とは別に、「基本動作」を明確にしていることも特徴的です。「基本動作」は、業務そのものが目に浮かぶようです。
経営理念から日々の動作まで一貫性があり、より具体的な行動まで示していることで、理念が社員の自分ごとにつながっていると思います。
4.伊那食品工業
会社の目的は「人を幸せにすること」。目標や計画は手段であること。「社員の幸福を通じて社会に貢献すること」を第一として、大きな成長でなく着実な成長を目指す。リストラや賃金カットを行なわず、毎年着実に給与を上げていく。社員や家族が安心して働き、地域に貢献する「年輪経営」で有名な会社です。
公開されているHPでは、社是として、「いい会社をつくりましょう ~たくましく そして やさしく」を筆頭に、いい会社の定義や会社の目的と手段の違い、幸せになるために働くとは、いい組織とは、などについて丁寧に述べられています。
伊那食品工業株式会社 企業理念
「人の幸せ」という極めて抽象的な言葉を起点にした経営に徹しているところが特長だと思います。
この理念の考え方については、故塚越寛最高顧問の書籍「末広がりのいい会社をつくる」などに詳しく書かれています。一読をお薦めします。
【総括】中小企業こそ理念に向き合って欲しい
理念の実例をいくつか取り上げました。体系だてて作りこまれている理念もあれば、経営者が語りかけるような理念もありました。
すべての会社が、理念項目を全部明確化する必要はありません。まずは、ご自身で「これだけは必要だ」という項目だけでも検討頂ければと思います。
但しパーパス・ミッションか、ビジョンのいずれかは、明確にしたいところです。
会社の存在意義・目的・使命か、理想の未来を改めて考えることで、いつもとは違う時間軸や視座で、経営を見つめることができるからです。
「ウチはそんなに大きな会社じゃないから理念なんていらない」とお考えの方がいましたら、改めてお考えください。
理念がある会社と無い会社には違いがあります。
特にビジョンに示されるような「理想の未来」が示されている会社と、そうでない会社です。
長期目線での「理想の未来」がないので、現実とのギャップをきちんと意識できない。
だから課題が立てられない。
未来は、日常の対処の繰り返しの延長線になりがちだ、ということです。

経営者自身にとっても、迷ったら戻る経営のよりどころができる。
日々の経営の起点があり、目的と手段が明確になる。
中小企業だからこそ、採用を含む生存戦略として理念を検討するべきだとお伝えしてきました。
・理念とは何か ― 経営者にとっての意義
・理念は、なぜ会社経営の起点であり軸なのか
・パーパス・ミッション・ビジョンの違いと中小企業の生存戦略
知名度や資金力では大企業に勝てない中小企業ですが、経営者と社員との距離が近いことは、大企業にない強みです。
経営者の考え方、言動に一本筋が通っていれば、社員はしっかり応えるはずです。
理念を伝え、互いに語り合うことで共感をベースにしたワンチームとなり、一緒に理想の未来を目指せるでしょう。
苦しい時もあるかと思いますが、必ず乗り越えていけると思います。
理念がまだない会社は、少しづつでいいので、考え始めてください。
既にあるが、機能してないのであれば、見直しと運用方法の再検討をしてみて下さい。
なくても経営はできますが、あれば違いが表れるのが理念です。
意味と効果に気づかれることを願い、本カテゴリーを終了といたします。
追記:from Willでは理念策定と運用両面での支援をしています。
お悩みや疑問点がありましたら、気軽にお問い合わせください。
共に考えるお手伝いが出来ればと思います。


