経営者の時間の使い方 リスクと機会損失
前回は、経営者の時間の使い方のうち、「量の確保」について述べてきました。
今回は「質」と「バランス」、すなわち「時間の使い方そのもの」と、その影響について考えてみたいと思います。
現場で感じる経営者の時間の使い方 ―担当者?経営者?
中小企業の経営者と接して感じるのは、経営者によって、プレイヤーとしての実務時間と、経営者としてのマネジメント時間のバランスがまったく違う、ということです。
理念策定など時間がかかることをなかなか始められない経営者は、ほとんどがプレイヤーとしての時間が多い経営者、すなわち「プレイヤー経営者」のように感じます。
この2つの時間のバランスが、会社の今のステージを表しているように思います。会社の規模が同じであれば、同じようなバランスかといえば、そうではありません。
数十人規模の中小企業でも、現場は幹部や後継者に任せ、自身は必要な時にアドバイスをする立場になっている方もいれば、毎日実務に追われ、目先のことで精いっぱいの方もいらっしゃいます。
プレイヤー経営者のほうが、時間にゆとりがないように感じられるのです。
プレイヤー経営者の環境 よくあるパターン
では、プレイヤー経営者になっている会社はどのような会社なのか。私の経験の範囲内ですが、以下に整理してみました。
・従業員数 数十人くらいまで
・経営者の立場 自身が営業、管理、製造、開発など特定分野のエキスパートである
・役員 経営者とは違う分野でのエキスパートが1名から数名いる
・社員 経営者と役員に続く幹部と言える存在がいない、もしくは少ない
・組織 経営者と斜め下の役員以外は、実質的に全員が横並びの文鎮型組織
もちろん私の経験からの仮説ですので、「ウチは違う!」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、いかがでしょうか。
プレイヤー経営者の周りで起きていること
そして、プレイヤー経営者の周りでは、次のような光景が広がっているように思えます。
経営者は・・・
①いつも忙しいと感じている。いろいろ考える余裕がない。
②目の前の問題の対処しかできない
③中長期で検討が必要なこと(理念、承継、育成、経営戦略・経営計画など)に手を付けられない
④時間に追われているので、社員に接する時間も限定的になっている
⑤社員とは簡潔な指示と短時間の報連相程度しかコミュニケーションを取っていない
⑥社員と接する態度にゆとりがない
⑦「自分だけ、なぜこんなに忙しいのか」と疑問を感じることもある
社員は・・・
①社長を捕まえるのが大変
②経営者と短時間でのやり取りで結果を出す必要があり、途中の相談や質問をしにくい
③いつもゆとりがなさそうなので、何か言っても叱られるのではないかと内心ビクビクしている
④自分の今後のキャリアやプライベートなことなどは相談できない
⑤会社がどの方向に向かうのかよく分からない
⑥目の前の業務はあるが、今も今後も、どのような役割を求められているのか分からない
⑦成長・やりがいを感じる瞬間が少ない
⑧転職はいつも意識している
・・・どれもネガティブなことばかりですね。
何かいいことはないか考えてみましたが、経営者にとっては、仕事をしている実感が湧く、プレイヤーとしてやりがいを感じる、といったことくらいでしょうか。
しかし、これも個人差がありそうで、「いつまでこんな仕事をしなければいけないのか・・」とぼやく声も聞こえてきそうです。
プレイヤー経営者が会社にもたらすもの
では、このように忙しいプレイヤー経営者は、会社に何をもたらすのか、考えてみました。
会社は・・・
①経営者の担当業務が属人化しており、代わりになる人材がいない
②経営者に何かあると、会社の存続リスクが発生する
③会社の将来像が不明確で、次の一手がない、もしくは不足している
④顧客や市場が大きく変化した場合、変化についていけない
⑤承継の準備がいつまでたっても進まず、事業継続に不安がある
こちらも、いいことは一つもありません。
それどころか、非常にリスクの高い、危うい状況だと思います。
プレイヤー時間の多さが、リスクと機会損失を生む
プレイヤー時間が多いということは、経営者としての本来の仕事を行う「経営者時間」が少ないということです。
例えば、未来を予測するための情報を集める、役員や部下とは違う立場と目線で顧客や自社製品・サービスを捉え直す、未来とビジョンを明確にして戦略・方針・計画に落とし込む、PDCAを回ししつつ必要な課題設定をする、あるべき組織になるよう採用から育成まで体系的な施策を考え実行する、次世代に向けた承継計画を考える・・・
これらは経営者にしかできません。
経営者目線での時間軸や視野・視座が必要だからです。でも、経営者時間がいつまでたっても取れないのであれば、何も進めることができません。会社の存続リスクは解消されず、機会損失も生んでしまうのです。
皆さんは、「プレイヤー時間」と「経営者時間」のウエイトは、どれくらいでしょうか。
振り返ると、そのウエイトは変化しているでしょうか。
変化のテンポは適正でしょうか。
「経営者時間」という貴重な経営資源を、どう確保して、どのように使うか。ここがポイントになるはずです。
「では、どうしたらいい?」というところですが、その前に、「こうなってしまう構造と要因」について、次回もう少し考えてみたいと思います。

